英国伝統クロテッドクリームとは?生クリームやバターとの違いを徹底解説
アフタヌーンティーの華やかなティースタンドや、焼きたてのスコーンを語る上で欠かせない存在が「クロテッドクリーム」です。白くなめらかな見た目から「生クリームの親戚のようなものだろう」「ホイップクリームやバターと何が違うのか」と疑問を抱く人も少なくありません。しかし、一口口に含めば、その認識は鮮やかに覆されます。舌の上でほどける濃厚なコクと、バターのような重たさを感じさせない軽やかな後味は、他の乳製品では決して味わえない唯一無二の魅力を持っています。
イギリス南西部の豊かな酪農地帯で2000年以上も前から受け継がれてきたとされるこの伝統的なクリームは、本場英国のティータイム文化「クリームティー」において不動の主役を務めてきました。日本国内でも近年の英国カルチャーや本格スコーンブームに伴い、成城石井やカルディ、百貨店の英国展などを中心に指名買いするファンが急増しています。生クリームやバターとの明確な違いから、本場直伝の美味しい食べ方、日本で購入できる代表的ブランドの比較まで、その奥深い正体を徹底的に解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:クロテッドクリームは乳脂肪分約60%前後を誇り、生クリーム(約35〜47%)の軽やかさとバター(80%以上)のコクを併せ持つ英国伝統の濃厚乳製品である。
- 要点2:伝統製法が生む表面の黄色い膜「クラスタ」こそが最高品質の証であり、ジャムとクリームを豪快に乗せる「クリームティー」で真価を発揮する。
- 要点3:成城石井や一部のカルディ、百貨店で入手可能であり、手に入らない場合も生クリームとマスカルポーネを用いた高再現度の代用レシピで手軽に堪能できる。
英国伝統のクロテッドクリームとは?生クリームやバターとの決定的な違い
クロテッドクリーム(Clotted cream)の語源にある「Clotted」とは、英語で「凝固した」「塊になった」を意味します。全乳(搾りたての脂肪分の高い牛乳)を弱火で間接的にじっくりと温め、表面に浮き上がってきた濃厚な乳脂肪分を一晩かけてゆっくり冷やし固めて作られます。この手間暇のかかる製法こそが、独特の濃密なテクスチャーを生み出す源泉です。
多くの人が抱く最大の疑問が、「生クリームやバターと何が違うのか」という点でしょう。結論から言えば、クロテッドクリームは生クリームとバターのちょうど中間に位置する乳製品です。最大の違いは、乳脂肪分の割合と口溶けの構造にあります。
| 項目 | クロテッドクリーム | 生クリーム(動物性) | 一般的なバター(有塩/無塩) |
|---|---|---|---|
| 乳脂肪分の基準 | 約55%〜65%(英国基準55%以上) | 約35%〜47%前後 | 80.0%以上(乳等省令) |
| 100gあたりのカロリー・脂質 | 約580kcal / 脂質 約60g | 約430kcal / 脂質 約45g | 約745kcal / 脂質 約81g |
| 製造工程と物理構造 | 牛乳を低温加熱し表面の凝固膜を採取 | 遠心分離で乳脂肪分を濃縮・液状 | クリームを激しく撹拌(チャーニング) |
| 食感・味わいの特徴 | ねっとり濃厚だが後味はすっきりミルク味 | 泡立てるとふんわり軽く水分が多い | 固形感があり塩気や油脂感が前面に出る |
| 編集部の実食・専門評価 | スコーンの水分を補う最高峰のペアリング | ケーキには最適だが温かい粉物には溶けやすい | 風味が強烈でスコーン本来の粉の香りを覆う |
生クリームは泡立てても水分が多く、温かいスコーンにのせると熱でだらしなく溶け出してしまいます。一方、バターは乳脂肪分が80%を超えるため油脂感が強く、冷たい状態では伸びにくいうえに、スコーンの素朴な小麦の甘みを脂っぽさで覆い隠してしまいます。クロテッドクリームの乳脂肪分約60%という数値は、温かい生地の上で絶妙に柔らかくなりつつも形を保ち、舌の温度ですっと溶けてミルクの純粋な甘みだけを残す「奇跡の黄金比率」なのです。

【味とテクスチャーの特徴】黄金の膜「クラスタ」に宿る濃厚なコクの正体
初めて本場のクロテッドクリームを開封した人が思わず息を呑むのが、表面に張った黄色く固い膜の存在です。「表面が酸化して傷んでいるのではないか」と勘違いされるケースもありますが、これこそが伝統製法で作られた証である「クラスタ(Crust)」と呼ばれる至高の部位です。
生乳をじっくり間接加熱する過程で、最も濃厚で芳醇な乳脂肪分が表面に集まり、オーブンの中で黄金色の薄い膜を形成します。このクラスタの下には、驚くほどなめらかで真っ白なクリームが閉じ込められています。スプーンですくって口に運ぶと、クラスタの凝縮されたバターのような香ばしさと、内部のシルキーなミルク感が複雑に絡み合い、砂糖が一切入っていないにもかかわらず、豊かな自然の甘みが口いっぱいに広がります。
現在、日本のマーケットで手に入るクロテッドクリームには、大きく分けて2つの代表的なブランドが存在します。それぞれの個性とスペックを把握しておくことで、好みに応じた選択が可能です。
- ロッダ(Rodda's)クロテッドクリーム:イギリス・コーンウォール地方で1890年に創業された老舗中の老舗。原産地呼称保護(PDO)に認定されており、伝統のオーブン直火ベイク製法によって分厚く美しいクラスタが形成されています。「本場の味をそのまま体験したい」という愛好家にとって不動の決定版です。
- 中沢クロテッド(中沢乳業):日本のプロフェッショナル向け乳製品メーカーが、日本人の味覚と国内の良質な生乳に合わせて開発した名品。クラスタは薄めですが、極めてなめらかなスプレッド性と、搾りたての牛乳を思わせるフレッシュなキレ味が特徴です。全国のスーパーでも比較的入手しやすい強みがあります。
スコーンを最高峰に楽しむ本場の食べ方|「ジャムが先か、クリームが先か」英国の論争
アフタヌーンティーや、紅茶とスコーンのセットを楽しむ「クリームティー」において、クロテッドクリームの食べ方には厳格なマナーと文化的なこだわりが存在します。最大の鉄則は、「ナイフでスコーンを水平に真っ二つに切らない」ということです。
英国の伝統的なマナーでは、スコーンの胴回りにある割れ目(「オオカミの口」と呼ばれる亀裂)に指をかけ、上下に手でパカッと優しく割るのが正しい作法とされています。そして、ちぎった一口分ごとにクリームとジャムをのせて口に運びます。ここで決してやってはならないのが、バターのように薄く塗り広げてしまうことです。クロテッドクリームは調味油ではなく「スコーンに乗せる具材」であるため、スプーン一杯分を山盛りにすくい、こんもりと乗せるのが本場の流儀です。
さらに英国では、数百年にわたり国民を二分する「ジャムとクリームの塗る順番」に関する熱烈な論争が繰り広げられています。
- デヴォン式(Devonshire style):温かいスコーンに【クリームを先に塗り、その上にジャムを重ねる】流儀。バターのようにクリームを土台として捉える地域であり、温かい生地の上でクリームが程よく温まり、ミルキーさが際立ちます。
- コーンウォール式(Cornish style):スコーンに【ジャムを先に塗り、その上にこんもりとクリームをトッピングする】流儀。故エリザベス女王も好んだとされる伝統スタイルで、滑らかなジャムが生地に染み込むのを防ぎ、美しいクラスタの乗ったクリームの存在感を視覚的にもダイレクトに味わえます。
どちらが正解ということはありません。酸味の効いた濃厚なストロベリージャム、あるいはラズベリージャムを用意し、両方のスタイルを試しながら口溶けの変化を体感することこそが、クリームティーの醍醐味と言えます。

【実態調査】カルディや成城石井の取り扱い状況と現場目線で見えたリアル
「本場のスコーンを自宅で再現したいが、近所の店舗で見当たらない」という声はSNS上でも頻繁に聞かれます。日配品のリサーチおよび主要流通チェーンの売り場検証を行った結果、取り扱い実態には明確な傾向が見られます。
まず、輸入食品でおなじみのカルディコーヒーファーム(KALDI)ですが、実は「どの店舗でも常時買えるわけではない」点に注意が必要です。カルディでは常温のジャムや製菓材料の棚ではなく、冷蔵のチーズ・バターコーナーに季節限定または不定期でロッダ社の冷凍パックや中沢クロテッドが並ぶことがあります。しかし、取り扱いのない小規模店舗も多く、ネット上でも「カルディを3軒回ったけれど見つからなかった」という体験談が散見されます。
一方、最も安定して購入できるのが成城石井です。成城石井の大型店舗や冷蔵乳製品コーナーが充実している店舗では、中沢乳業の「中沢クロテッド(100g)」が定番商品としてほぼ通年配荷されています。また、クイーンズ伊勢丹、紀ノ国屋、明治屋などの高級スーパー、三越伊勢丹や阪急百貨店といった都市部デパ地下のチーズ売り場でも、ロッダ社の冷凍カップ(28gや113g)または中沢クロテッドが高確率でストックされています。
購入時に絶対に知っておくべき現場のリアルが、「賞味期限の短さと繊細な保存方法」です。クロテッドクリームは防腐剤や保存料を使用しておらず、未開封の冷蔵状態であっても賞味期限は製造から数週間から1ヶ月程度しかありません。さらに致命的なのが、「一度開封したら冷蔵庫で2〜3日以内に使い切らなければならない」という点です。空気に触れると急速に乾燥し、独特のミルキーな風味が失われてしまうため、一度に使い切れる28gの小分けポーションを購入するか、開封した週末に惜しみなくたっぷり使い切る計画性が求められます。
自宅ですぐ試せる代用レシピ|生クリームと身近な食材で作る黄金比
近隣に成城石井や輸入食品店がない場合や、急にスコーンを焼いてクリームが必要になった場合でも、身近な材料を使って極めて本物に近いテクスチャーを再現する裏技が存在します。料理研究家やカフェの現場でも重宝されている、最も完成度の高い2つの代用アプローチを紹介します。
生クリーム×マスカルポーネのブレンド(最もおすすめの黄金比)
本物のクロテッドクリームの乳脂肪分(約60%)に最も近づけるアプローチが、乳脂肪分47%前後の純生クリームと、濃厚で酸味のないマスカルポーネチーズを組み合わせる手法です。
- 材料:動物性生クリーム(乳脂肪分40%以上) 50ml、マスカルポーネチーズ 50g、レモン汁 2滴(お好みで)
- 作り方:冷やしたボウルにマスカルポーネを入れてゴムベラで柔らかく練り、生クリームを少しずつ加えながら泡立て器で混ぜ合わせます。ツノがしっかり立つまで硬めにホイップすれば完成です。マスカルポーネ特有のコクが生クリームの水分を抱え込み、ねっとりとしたリッチな口溶けが見事に再現されます。
純生クリームの低温煮詰め法(本格派向け)
乳脂肪分47%の動物性純生クリーム200mlを耐熱容器に入れ、160℃のオーブンで表面に薄い膜が張るまで約1時間じっくり加熱します。粗熱を取った後に冷蔵庫で一晩(約8〜12時間)しっかり冷やすと、上層に固まった乳脂肪分の膜(クラスタ)が浮き上がります。この上層だけをスプーンで丁寧に取り出せば、添加物ゼロの自家製クロテッドクリームが完成します。残った下層の水分(スキムミルク)は、スコーンの生地を練る際の牛乳代わりに使えば無駄がありません。

一般に知られていない盲点とネットの誤解|カロリー神話と冷凍保存の落とし穴
Web上の情報や口コミの中には、クロテッドクリームに関する事実誤認がいくつか定着してしまっています。代表的な2つの誤解を正しく検証します。
第一の誤解は、「バターと同じくらい太りやすいのではないか」という極端なカロリー懸念です。前述の比較表の通り、クロテッドクリームのカロリーは100gあたり約580kcal前後。一般的な有塩バター(約745kcal)と比較すると約2割以上もカロリーが低く、脂質もバターより20g以上少なくなっています。生クリームよりも満足感が高いため、少量でも強烈な充足感を得られ、結果として食べ過ぎを抑えられるという側面もあります。糖質は100gあたり約2〜3g程度と極めて低いため、糖質制限を意識している人にとっても相性の良いリッチスプレッドです。
第二の誤解は、「使い切れない分は普通に冷凍すれば長期間持つのだから問題ない」という保存に関する油断です。確かにロッダなどの一部商品は急速冷凍技術を用いて輸入されていますが、家庭用冷凍庫で中途半端に残った開封済みカップを再冷凍すると、乳化が破壊されて激しい「油水分離(ボソボソとした状態)」を引き起こします。解凍時に水分が抜けてボロボロの油の塊のようになり、あの官能的ななめらかさは二度と戻りません。冷凍する場合は、あらかじめ未開封の状態で密閉袋に入れて保存し、解凍時は電子レンジを絶対に使わず、冷蔵庫内で半日かけてゆっくり自然解凍することが鉄則です。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
クロテッドクリームは、すべてのスイーツ好きに無条件で受ける万能クリームではありません。その無垢な個性を理解した上で取り入れることが満足度を左右します。
- 今すぐ試すべき人:
- 本格的なスコーンを最高の状態で味わいたい人(パサつきを解消し、真のポテンシャルを引き出せます)
- 砂糖の強い甘さではなく、乳製品本来のミルキーな甘みと深いコクを愛する人
- 自宅でのティータイムを格上げし、非日常の英国アフタヌーンティー体験を演出したい人
- 購入時に慎重になるべき人:
- ショートケーキのホイップクリームのような「甘くてふわふわしたクリーム」を期待している人(砂糖が入っていないため、単体では無味に感じることがあります)
- 1〜2回で使い切る習慣がなく、冷蔵庫に何週間も調味料を放置しがちな人
- あっさりとした低脂肪・植物性ホイップの軽い質感を好む人
【クロテッド クリーム と は】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:業務スーパーや普通の近所スーパーでクロテッドクリームは買えますか?
A1:一般的なスーパーや業務スーパーでは、取り扱っていないケースがほとんどです。業務スーパーの大容量ホイップなどは植物性油脂が主成分であり、製法も成分も全く異なります。確実に入手したい場合は成城石井、明治屋、伊勢丹などのデパ地下、あるいはAmazonや楽天市場などの公式クール便通販を利用するのが確実です。
Q2:スコーンに塗る以外に、美味しく消費できる使い道はありますか?
A2:パンケーキや厚切りのバタートーストにのせると、熱でじんわり溶けて極上のミルクトーストになります。また、温かいビーフシチューやカレーの仕上げにひとかけ落としたり、スモークサーモンと合わせてクラッカーに乗せるなど、サワークリームの代わりに料理のコク出しとして使うのも一流ホテルのシェフが実践するおすすめの活用術です。
Q3:ホイップクリームを硬めに泡立てればクロテッドクリームの代わりになりますか?
A3:純生クリーム(乳脂肪分47%など)を限界まで泡立てることで近い硬さにはなりますが、泡立てすぎると乳脂肪が完全に分離して水分(乳清)と粒々のバターに分かれてしまいます。クロテッドクリームのような特有のねっとりとした密度の高いコクを出すには、前述の「マスカルポーネとのブレンド」を行う方が圧倒的に再現度が高くなります。
まとめ:英国伝統の味を日常で贅沢に楽しむために
クロテッドクリームは、単なるスコーンの付け合わせという枠を超え、イギリスの大地と酪農家が何世紀にもわたり磨き上げてきた食文化の結晶です。生クリームのような瑞々しいミルク感と、バターのような濃密なコク。その両者の「いいとこ取り」を実現した乳脂肪分約60%のバランスは、一度体験するとスコーンにジャムやバターだけを塗っていた頃には戻れなくなるほどの鮮烈なインパクトを持っています。
賞味期限が短く、手に入る店舗が限られているというハードルはありますが、それこそが添加物に頼らない本物の証でもあります。週末の特別なティータイムに、お気に入りの紅茶と焼きたてのスコーン、そしてたっぷりのクロテッドクリームとジャムを用意する。そんな少し贅沢な英国流の時間を、ぜひ自宅の食卓で体験してみてください。 (出典: クロテッド クリーム と は(Yahoo!ニュース))